オンラインレッスンで使う初級日本語教科書「みんなの日本語」「げんき」「ニュー・システムによる日本語」を比較!

日本語教師・日本語学習・外国語学習

オンライン日本語教師の皆さんの中には、初級の学習者への教科書選びで悩んでいる人も多いと思います。

そこで、今回の記事では、初級日本語教科書「みんなの日本語」「げんき」「ニュー・システムによる日本語」を比較して、それぞれの特徴について書きたいと思います。

なぜ「みんなの日本語」「げんき」「ニュー・システムによる日本語」?

そもそも、どうしてこの3つを選んだのか、まずはその話からしていきますね。

日本語教師の中には、「みんなの日本語」など文型積み上げ式の教科書が好きではない人も多いようです。このような教科書では実際に日本語を使えるようにならないとか、単調でつまらないとか、様々な意見があることは知っています。

それでも、これは私の個人的な考えですが、私は初級レベルの学習者に対しては、この3つのいずれかから始めるのがいいと考えています。それは、私が外国語を勉強してきた経験から、まずは基本的な文型・文法をひととおり学習する方法がやりやすかったからです。

最初にその言語の基本的な構造や文型、文法などをひととおり学習することで、その後の学習がスムーズになります。

文型積み上げ式の学習方法は、できることが一つずつ増えていく学習方法ですから、学習者にとって難易度が高くなく、挫折しにくい方法だと思っています。

ただ、これらの初級教科書にあまり時間をかけすぎると、単調でつまらなくなりがちという問題点もあります。だから、教科書の全ての練習問題をする必要はなく、学習者の習熟度を見ながら取捨選択して進めていく必要もあり、これがうまくできるかが教師の腕の見せどころじゃないかと思っています

それでは、これらの3つの初級日本語教科書について、一つずつ見ていくことにしましょう。

みんなの日本語

文型積み上げ式の初級日本語教科書と聞いて、ほとんどの日本語教師が最初に思い浮かべるのが「みんなの日本語」だと思います。「みんなの日本語」は、日本語教科書として歴史がありますし、国内の日本語学校で最も多く使われている教科書の一つです。

「みんなの日本語」の長所は、日本語学習者が多い国の母国語による「翻訳・文法解説」が出版されていること、「教え方の手引き」も出版されていて経験が少ない日本語教師でも困らないこと、日本語学習者が一定数以上いるほとんどの国で売られていること、だと思います。

日本語の知識が全くない初級学習者のとっては、自分の母国語で学べることは大きなメリットで、心理的な負担がかなり軽減されます。

経験が少ない日本語教師は、とりあえず慣れるまでは、この「教え方の手引き」のとおりにすれば不安なくできると思います。

また、著作権がありますから、オンラインレッスンで市販の教科書を使う場合にも、学習者にも同じ教科書を買ってもらわなければなりません。現在自分が住んでいる国で買えないとなると、取り寄せるための送料が高くなったり、配達されるまでに時間がかかったりと、学習者の負担が増えてしまいます。

このように、「みんなの日本語」は、オンラインレッスンで使う教科書としても、とても便利で使いやすい教科書と言えます。

「みんなの日本語」の短所としては、現在の最新版である第2版は2012年に出版されたものであり、内容が少し古い部分もあります。でも、これについては、その都度教師が補足説明しておけば、それほど問題にはならないと思います。

実際に話すための日本語を教えるという観点では、例えば、毎回のレッスンで、前回までの既習文型を使ったフリートークをしてみるなどの時間を作るようにすれば、問題はないと考えています。

げんき

「げんき」も、私が好きな教科書の一つです。

「げんき」は、現在の最新版である第3版の出版年は2020年で、「みんなの日本語」と比べると内容も新しい感じで使いやすいです。

「げんき」の問題点は、各言語の翻訳版がなく、2022年10月現在は、英語版とフランス語版の2言語にだけ対応しています。

ちなみに、「げんき」のスペイン語版が、2023年の春に発売予定とのことです。

だから、「げんき」は、英語またはフランス語(2023年春からはスペイン語も)が苦にならない学習者向けの教科書で、それ以外の学習者には向いていません。

英語圏、フランス語圏(2023年春からはスペイン語圏も)の国に住む学習者にとっては、学習難易度や入手にも問題なく、とても使いやすい教科書だと言えると思います。

ニュー・システムによる日本語

「ニュー・システムによる日本語」は、「みんなの日本語」や「げんき」に比べるとマイナーな教科書と言えるでしょう。

たまたま見つけた「日本語教師が知らない動詞活用の教え方」と「日本語教師として抜きん出る あなたは初級日本語の「常識」が打ち破れますか」という2冊の本を読んだことがきっかけで、この教科書を知りました。

「みんなの日本語」や「げんき」は、各課で少しずつ文型を教えて、その文型を使った練習に時間をかけながら、少しずつゆっくり進んでいくスタイルです。そのため、初級の文型や動詞の活用の全体像を把握するのに時間がかかります。

一方、「ニュー・システムによる日本語」は、初級で学ぶ動詞の主要な活用を、まとめて教えるというスタイルです。

動詞の主要な活用をまとめて教えることで、日本語という言語の動詞の活用のしくみと全体像が、早い段階でわかるようになります。

日本語を学ぶ目的が進学や就職で、少しでも早く日本語能力試験(JLPT)などの試験に合格する必要がある学習者にとっては、この「ニュー・システムによる日本語」を使うのも効果的だと思います。

ただ、日本語教育の経験が少ない不慣れな教師が「ニュー・システムによる日本語」で教えると、単調でつまらない授業になる可能性は否定できません。そのため、特に、趣味で楽しみのために日本語を勉強している学習者に対してこの教科書を使うなら、単調にならないような工夫ができるだけの教師の実力が必要だと思います。

また、私が探してみたところ、現在日本で売られているのは、翻訳と文法解説が英語または英語と中国語で書かれたものだけのようです。今後、他の言語によるものも作成していくプランもあるようです。でも、少なくとも現時点では、「みんなの日本語」や「げんき」と比べると売られている国が少なく、各国の学習者にとって、やや入手しにくい状況になっています。

ちなみに、日本語能力試験(JLPT)対策の観点では、「ニュー・システムによる日本語」はN5を無視してN4から受験することを想定していますから、N5から受験したい学習者には使わないほうがいいかもしれません。

まとめ

これからオンラインレッスン用の初級日本語教科書を買おうとしている方は、まずは自分が主にどの国の、どんな学習目的の学習者を教えるつもりなのか、対象を決めてから選ぶといいと思います。

「みんなの日本語」「げんき」「ニュー・システムによる日本語」全て持っていれば様々なニーズに対応できますし、実際私は3つとも持っています。

でも、もしこの中から1つだけ選ぶとすれば、「みんなの日本語」を買っておくと、対象となる学習者の範囲が広くていいんじゃないかと思います。

やはり、各言語の「翻訳・文法解説」が出版されていて、多くの国で入手可能なことは、他の教科書にはない大きなメリットです。オンライン日本語教師をしていると、世界中の学習者から予約が入りますから、これはとても重要なことです。

また、今はオンライン日本語教師をしていても、そのうち日本語学校でも教えてみたいという気持ちになる可能性もありますよね。「みんなの日本語」を使っている日本語学校はとても多いので、「みんなの日本語」で教えた経験があれば、日本語学校での採用試験や勤務がかなり楽になると思います。

基本的には3つともいい教科書だと思います。本屋さんで実物を見てみて、自分好みの教科書を選んでみてくださいね!

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